日本人の慢性腎臓病の発症に関連する遺伝体質の1つが新たに判明した

研究ファイルNo.18:慢性腎臓病発症に関連する抗酸化遺伝子多型

慢性腎臓病は、気づかずに放置しておくと透析が必要な腎不全になったり、心血管疾患を引き起こしやすくする状態を言います。日本人における慢性腎不全の患者数は、推計1,000万人以上とも言われており、また年々増加傾向にあり、慢性腎臓病に対する予防対策が急がれます。一方、ウイルスなどの異物が入って引き起こす、炎症と呼ばれる体内の生体反応は、動脈硬化を引き起こし、これが原因となって慢性腎臓病に罹りやすくなることが報告されており、この炎症において、活性酸素などにより引き起こされる酸化ストレスは、炎症が動脈硬化を生じる上で重要な役割を果たしていると考えられています。酸化ストレスを解毒する酵素はいくつか知られており、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)などがあり、それらの活性に影響を与える遺伝的要因(個人による遺伝子の塩基配列の違い=遺伝子多型)も報告されています。

しかしこれまで、これらの酵素の遺伝子多型が慢性腎臓病の罹りやすさに与える影響についてはアジア人では検証されていませんでした。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された3,285名において各種抗酸化遺伝子(SOD, CAT, GPx, 等)の遺伝子多型が慢性腎臓病の罹りやすさに与える影響について検討を行いました。

その解析の結果、CAT -262 C>T遺伝子多型がC/T型の人は、C/C型の人に比べ慢性腎臓病の罹りやすさが約3分の2に減少し、また、Tという塩基の数が増えるほど慢性腎臓病の罹りやすさが減少する傾向があることが分かりました。

このことから、CAT -262 C>T遺伝子多型のTという塩基をもつ人では、C/C型の人に比べると活性酸素の一種である過酸化水素を水と酸素に分解するカタラーゼの働きが盛んなために、活性酸素による腎臓へのダメージが軽減され、慢性腎臓病の罹りやすさが減少するのではないかと考えられました。今後の更なる研究報告により、今回の結果が効果的な慢性腎臓病の予防法の開発に繋がることが期待されるところです。

CAT遺伝子多型と慢性腎臓病の罹りやすさ

出典

  • Hishida A, Okada R, Naito M, Morita E, Wakai K, Hamajima N, Hosono S, Nanri H, Chowdhury T, Suzuki S, Kuwabara K, Mikami H, Budhathoki S, Watanabe I, Arisawa K, Kubo M, Tanaka H. Polymorphisms in genes encoding antioxidantenzymes (SOD2, CAT, GPx, TXNRD, SEPP1, SEP15 and SELS) and risk of chronic kidney disease in Japanese-cross-sectional data from the J-MICC study. J Clin Biochem Nutr. 2013;53:15-20.
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