PPAR遺伝子多型と慢性腎臓病の罹りやすさ

研究ファイルNo.21:日本人における慢性腎臓病の罹りやすさに影響を与えうるPPAR遺伝子

慢性腎臓病とは、糖尿病や高血圧などが原因となって、腎臓内で尿をろ過する腎糸球体という毛細血管の様なものでできた装置が目詰まりを起こし、放置すると透析が必要な腎不全になったり、心血管疾患を起こしやすくなったりする状態のことを言います。日本における慢性腎機能障害の患者数は推計1,000万人以上と言われ、年々増加傾向にあります。PPAR(ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体)は、脂肪酸などに反応する核内受容体であり、糖代謝や脂肪酸代謝、エネルギーバランス、炎症や動脈硬化、といった多くの全身や細胞内の機能において役割を果たしていることが分かってきています。PPARには主にPPAR-α、PPAR-γ、PPAR-δの3種類あることが分かっており、それぞれに少しずつ違った働きをしています。その中で、PPAR-γ(遺伝子名:PPARG)は脂質代謝や糖尿病のなりやすさ、PPAR-δ(遺伝子名:PPARD)はエネルギー代謝や筋肉・脂肪組織内の脂質の分解や、糖尿病のなりやすさに関連があることが報告されています。また、PPAR-γと相互作用する分子としPGC-1α(遺伝子名:PPARGC1A)という分子が知られています。近年、これらのPPAR分子の代謝等における様々な働きから、PPAR分子の慢性腎臓病発生における役割が注目されています。しかしながら、これらPPAR遺伝子の多様性(遺伝子多型)が、日本人における慢性腎臓病の罹りやすさに与える影響についてはまだ十分に検証されていませんでした。
そこで、今回、J-MICC研究に参加された3,315名の方のPPAR遺伝子(PPARD, PPARG, PPARGC1A)の多型が慢性腎臓病の罹りやすさに与える影響について検討を行いました。
その解析の結果、PPARD -842 T>C遺伝子多型のCアレルを持っている人はそれ以外の遺伝子型(T/T型)の人に比べて1.27倍、慢性腎臓病になりやすく、また、腎機能が低くなる傾向がある事が明らかになりました。
このことから、PPARD -842 T>C遺伝子多型のCアレルをもつ人では、その他の遺伝子型の人に比べると慢性腎臓病に罹りやすくなる可能性が示されました。これは、これまでの報告などから、PPARD -842 T>C遺伝子多型のCアレルを持っていると、白血球の一種であるマクロファージによるコレステロールなどの脂質の取り込みが増加するために、結果として慢性腎臓病の罹りやすくなるのではないかと考えられました。今後の更なる研究により、今回の結果が将来の効果的な慢性腎臓病の予防法に役立てられることが期待されます。

図1: PPAR遺伝子と慢性腎臓病の罹りやすさ(今回の仮説)

図2: PPAR遺伝子と慢性腎臓病の罹りやすさ(今回の結果)

出典:

  • Asahi Hishida, Kenji Wakai, Mariko Naito, Takashi Tamura, Sayo Kawai, Nobuyuki Hamajima, Isao Oze, Takeshi Imaizumi, Tavir Chowdhury Turin, Sadao Suzuki, Motahare Kheradmand, Haruo Mikami, Keizo Ohnaka, Yoshiyuki Watanabe, Kokichi Arisawa, Michiaki Kubo, and Hideo Tanaka. Polymorphisms in PPAR genes (PPARD, PPARG and PPARGC1A) and risk of chronic kidney disease in Japanese – cross-sectional data from the J-MICC Study. PPAR Res 2013 (in press).
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