余暇時間の運動習慣に関連するゲノムワイド関連解析

研究ファイルNo.49:日本人の余暇時間の運動習慣に遺伝子多型が関連している可能性

 余暇時間の運動習慣は、循環器疾患や糖尿病、がんなどの防御要因であることが疫学研究により明らかにされています。余暇時間の運動習慣は環境要因の他に遺伝要因に影響を受けることが分かってきましたが、日本人において、余暇時間の運動習慣と関連する遺伝子多型はまだ調べられていませんでした。

 そこで、J-MICC研究10地区(千葉、岡崎、静岡・大幸、高島、京都、静岡桜ヶ丘、愛知県がんセンター、佐賀、鹿児島、徳島)ベースライン調査に2004-2012年に参加された、35歳から69歳の13,980人の方々ついて、余暇時間の運動習慣と関連した遺伝子多型を調べました。方法には、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という全遺伝子情報を網羅的に測定する方法を用いました。余暇時間の運動習慣の有無は、参加者の皆さんにご記入いただいた質問紙より情報を得て、1週間に4メッツ・時以上の運動をしている人を、余暇時間の運動習慣ありと定義しました。

 結果を、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の際に結果を示すのに用いられるマンハッタンプロットという図で示しました。横軸に染色体番号を、縦軸に-log10P-valueを取っています。赤色のラインはp値が5.0×10-8のレベルであり、それより上にあるプロットは余暇時間の運動習慣と有意に関連があることを示しています。7番染色体上のNPSR1 と DPY19L1という遺伝子の間に存在するrs10252228という遺伝子多型が余暇時間の運動習慣と関連していることが分かりました。この関連は、他の日本人の集団でも確認することができました。

 今回の研究より、余暇時間の運動習慣には遺伝子の影響も関与している、と言えるかもしれません。ただ、今回判明した遺伝子多型が、どのように運動習慣に結びつくのか、詳しいメカニズムはまだ分かっていないため、今後はより詳しいメカニズムの解明が望まれます。

出典:

  • Hara M, Hachiya T, Sutoh Y, Matsuo K, Nishida Y, Shimanoe C, Tanaka K, Shimizu A, Ohnaka K, Kawaguchi T, Oze I, Matsuda F, Ito H, Kawai S, Hishida A, Okada R, Sasakabe T, Hirata A, Ibusuki R, Nindita Y, Furusyo N, Ikezaki H, Kuriyama N, Ozaki E, Mikami H, Nakamura Y, Suzuki S, Hosono A, Katsuura-Kamano S, Arisawa K, Kuriki K, Endoh K, Takashima N, Kadota A, Nakatochi M, Momozawa Y, Kubo M, Naito M, Wakai K. Genome-wide association study of leisure-time exercise behavior in Japanese adults. Med Sci Sports Exerc 2018; 50 (12):2433-2411.
カテゴリー: 身体活動量, 運動習慣, 遺伝子多型 パーマリンク