糖尿病患者の腎機能に関連する遺伝子多型

研究ファイルNo.54:日本人糖尿病患者の腎機能に関連するゲノムワイド関連解析

 日本など先進国で血液透析が必要となる重症腎不全の原因となる病気は糖尿病患者さんに起こる糖尿病性腎症です。糖尿病患者さんの腎機能障害は一般に糖尿病のコントロールが不良であったり、罹病期間が長かったりすると起こりやすいとされています。しかし必ずしもそうとは言い切れず、糖尿病は比較的軽いのに腎機能が悪化していく患者さんが少なからずおられます。遺伝的因子の関与が疑われています。

 今回、私たちはJ-MICC研究に参加された約1万4千名の研究参加者の中から955人の糖尿病患者さんを選び出し、腎機能の指標である推定⽷球体ろ過率(eGFR)と、約800万か所の遺伝⼦多型との関連をゲノムワイド関連解析(GWAS)という⼿法で網羅的に調べました。

 結果を、ゲノムワイド関連解析の際に結果を⽰すのに⽤いられるマンハッタンプロットという図で⽰しました(図1)。横軸に染⾊体番号を、縦軸に-log10P-valueを取っています。これを見ますと第13番目の染色体に腎機能eGFRと関連が強い遺伝子多型があることがわかります。第13番染色体の関連遺伝子がある部位をさらに詳しく図で示します(図2)。NBEAという遺伝子と強い関連がある遺伝子多型が数個見つかりました。

 NBEAという遺伝子はこれまでに精神・神経疾患との関連や、肥満との関連は示唆されていますが、腎機能や糖尿病性腎症との関連は指摘されていません。今回見つけた遺伝子多型がもっと多くの患者さんでの再検討で再現できるかどうかや、この遺伝子多型がどのような機序で糖尿病患者さんの腎機能に関連するかについての解明が必要となります。

図1 日本人糖尿病患者の腎機能に関連する遺伝子多型のマンハッタンプロット

図1 日本人糖尿病患者の腎機能に関連する遺伝子多型のマンハッタンプロット

図2 第13番染色体の関連遺伝子がある部位をさらに詳しく示す図

図2 第13番染色体の関連遺伝子がある部位をさらに詳しく示す図

出典:

  • Nakamura Y, Narita A, Hachiya T, Sutoh Y , Shimizu A, Ohno S, Takashima N, Suzuki H, Tanaka K, Hara M, Kuriki K, Endoh K, Oze I, Ito H, Uemura H, Katsuura-Kamano S, Mikami H, Nakamura Y, Shimoshikiryo I, Takezaki T, Suzuki S, Watanabe M, Kuriyama N, Koyama T, Furusyo N, Ikezaki H, Nakatochi M, Kawai S, Hishida A, Okada R, Tamura T, Naito N, Wakai K, Momozawa Y, Kubo M, Ueshima H, Kita Y. A genome-wide association study in the diabetic patients finds the 13q35.43-35.46 locus associated with estimated glomerular filtration rate: The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study. J Clin Diabetes 2018; 2: 102.
カテゴリー: 糖尿病, 腎臓病, 遺伝子多型 パーマリンク