日常の生活活動および余暇の運動とメタボリック症候群との関係

研究ファイルNo.55:余暇の運動だけでなく日常の生活活動もメタボリック症候群の予防に有効である可能性

 肥満やメタボリック症候群にかかっている人は世界的に増加しています。運動は肥満予防に有用ですが、日本において日常の生活活動や余暇の運動とメタボリック症候群との関連を詳細に検討した報告は多くはありません。そこで私たちは、全国のJ-MICC研究に参加された方のうち、虚血性心疾患・脳卒中にかかった方や血液検査データのない方などを除いた35~69歳の日本人男女24,625名(男性12,709名、女性11,916名)について、日常の生活活動や余暇の運動とメタボリック症候群やその構成因子との関連を検討しました。

 男女とも、余暇の運動量が多いほど、メタボリック症候群を有している割合が低いという結果でした。さらには、日常の生活活動量が多いほど、メタボリック症候群を有している割合が低く、この関係は、年齢、調査地区、喫煙・飲酒習慣、教育水準、エネルギー摂取量、睡眠時間、閉経状況(女性)および余暇の運動量といった背景や生活習慣の個々の違いとは関係なく認められました(図1)。とくに、日常の生活活動量が多いほど、善玉コレステロールである血中HDLコレステロールの低値(血中HDLコレステロールが男性<40mg/dl、女性<50mg/dl)を示す割合が非常に低いという結果でした(図2)。

 今回の研究により、余暇の運動だけでなく日常の生活活動もメタボリック症候群の予防に有効であり、とくに血中HDLコレステロールの低下予防に対しては、日常生活活動のような低強度の時間をかけた活動が有効である可能性が示唆されました。まとめて運動をする時間の取れない方は、日常生活においてこまめに体を動かすことをお勧めします。

出典:

  • Uemura H, Katsuura-Kamano S, Iwasaki Y, Arisawa K, Hishida A, Okada R, Tamura T, Kubo Y, Ito H, Oze I, Shimanoe C, Nishida Y, Nakamura Y, Takashima N, Suzuki S, Nakagawa-Senda H, Nishimoto D, Takezaki T, Mikami H, Nakamura Y, Furusyo N, Ikezaki H, Ozaki E, Koyama T, Kuriki K, Endoh K, Naito M, Wakai K; Japan Multi-institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study Group. Independent relationships of daily life activity and leisure-time exercise with metabolic syndrome and its traits in the general Japanese population. Endocrine 2019; 64: 552-563. doi: 10.1007/s12020-019-01926-9.
カテゴリー: メタボリックシンドローム, 肥満, 身体活動量, 運動習慣 パーマリンク