身体活動・運動と白血球ASC遺伝子のメチル化

研究ファイルNo.56:軽い身体活動・運動が白血球のASC遺伝子のメチル化を改善する可能性

 白血球からサイトカインと呼ばれる炎症性の物質が血液中に放出されますが、この物質が多すぎると動脈硬化や糖尿病、がん等さまざまな生活習慣病が引き起こされると考えられています。一方、ASC(Apoptosis-associated speck-like protein containing a caspase recruitment domain)という遺伝子は、白血球からのサイトカインの放出を増加させる働きを担っています。この遺伝子の働きはメチル化(遺伝子を構成するシトシンという塩基にメチル基が結合する)により制御されることが分かっており、メチル化が減少すればサイトカインの産生が増加し、逆に増加すればサイトカインの産生が低下します。従って、ASC遺伝子のメチル化は炎症の指標として有用であると考えられています。

 また、身体活動・運動が炎症を低下させるとの研究報告がありますが、どの位の強さの身体活動・運動が効果的なのか、そのメカニズムはどのようなものなのか未だはっきり分かっていません。そこで今回、J-MICC研究佐賀地区のベースライン調査と追跡調査(ベースライン調査の5年後に実施)に参加した1,238人を対象に、加速度計を使って強度別に測定した身体活動・運動と白血球のASC遺伝子メチル化の5年間の変化の関連性を調査しました。ISモデル(isotemporal substitution model)という「行動の置き換え効果」を推定する解析手法を用いて解析した結果、60分間の座位時間(座っている時間)を同じ60分間の低強度身体活動・運動(歩行レベル以下の軽い活動)に置き換えると、ASC遺伝子のメチル化が1.17倍の高値を示すことが分かりました(図1)。

図1.座位時間60分間を低強度活動60分間に置き換えたときの白血球ASC遺伝子のメチル化に対する効果


 
 以上の結果より、座っている時間を歩行レベル以下の軽い身体活動・運動に変えることでASC遺伝子のメチル化が増加する(改善する)ことが示されました。つまり、座り続けないことを意識し、軽い身体活動・運動を増やすことでASC遺伝子のメチル化アップと炎症の抑制が期待できると言えます。

出典:

  • Nishida Y, Hara M, Higaki Y, Taguchi N, Nakamura K, Nanri H, Horita M, Shimanoe C, Yasukata J, Miyoshi N, Yamada Y, Higashimoto K, Soejima H, Tanaka K. Habitual light-intensity physical activity and ASC methylation in a middle-aged population. Int J Sports Med 2019; 40: 670-677.
カテゴリー: がん, メタボリックシンドローム, 動脈硬化, 糖尿病, 身体活動量, 運動習慣   パーマリンク

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