身体活動とミトコンドリア遺伝子が血中アディポネクチンに及ぼす影響

研究ファイルNo.58:身体活動が血中アディポネクチン濃度に及ぼす効果がミトコンドリア遺伝子によって異なる可能性

 アディポネクチンは脂肪細胞から血液中に分泌されるホルモンであり、心臓病などの動脈硬化性疾患を防ぐ作用や糖尿病を防ぐ作用をもつことが知られています。加えて、このホルモンが寿命を延長する効果を発揮する可能性も示唆されています。したがって、身体活動によって血中アディポネクチン濃度を高めることができれば、動脈硬化性疾患・糖尿病の予防と長寿の実現に寄与できると期待されます。

 脂肪細胞におけるアディポネクチンの合成は、細胞内においてエネルギー(ATP分子)を産生する役割を担う細胞内小器官であるミトコンドリアに依存することが報告されています。ミトコンドリアは細胞核に存在する遺伝子とは異なる独自のミトコンドリアDNAと呼ばれる遺伝子を保有しています。日本人の場合、ミトコンドリアDNAは、ミトコンドリアハプログループと呼ばれる7つの類似したグループ(F, B, A, N9, M7a, G, D)に分類されます。ハプログループN9あるいはD をもつ人は糖尿病の発症リスクが低く、また長寿となる可能性が高いことが報告されています。一方、ハプログループF, A, M7aをもつ人は、糖尿病や心臓病に罹りやすいことが報告されています。

 そこで、佐賀地区J-MICC 研究のベースライン調査に参加された40~69歳の方々(男性3,994人、女性6,014人)を対象として、日常身体活動(ライフコーダという活動量計により評価)と血中アディポネクチン濃度の関係がミトコンドリアハプログループ(F, A, N9, M7a, D)によって異なるかどうかを検討しました。その結果、男性において日常身体活動と血中アディポネクチンの関係がハプログループM7aとハプログループDでは統計学的に異なるということが分かりました(交互作用P = 0.041)。すなわち、身体活動が血中アディポネクチンを増加させるという関係がハプログループM7aをもつ男性よりもハプログループDをもつ男性のほうでより明確にみられました(図1)。一方、女性においてはこのようなハプログループによる身体活動効果の違いはみられませんでした(交互作用P = 0.967)。

本研究により、ミトコンドリアハプログループDをもつ人はM7aをもつ人と比べて身体活動によるアディポネクチン増加効果が大きい可能性が示唆されました。将来的には、本研究の成果が一人ひとりのミトコンドリア遺伝子に応じた生活習慣病予防に役立てられることが期待されます。

図1 ミトコンドリアハプログループM7aとDにおける日常身体活動と血中アディポネクチンの関係

図1 ミトコンドリアハプログループM7aとDにおける日常身体活動と血中アディポネクチンの関係

出典:

  • Nishida Y, Hara M, Fuku N, Taguchi N, Horita M, Shimanoe C, Higaki Y, Tanaka K. The interaction between mitochondrial haplogroups (M7a/D) and physical activity on adiponectin in a Japanese population. Mitochondrion. 2020; 53: 234-242.
カテゴリー: メタボリックシンドローム, 動脈硬化, 糖尿病, 身体活動量   パーマリンク

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