メンデルランダム化解析による高感度CRPと腎機能の関連探索

研究ファイルNo.59:高感度CRPと腎機能との関連:メンデルランダム化解析

 腎臓は、体内のイオンバランス保持や老廃物の排出など人体に欠かせない臓器であります。このような機能が慢性的に低下すると、慢性腎臓病(以下:CKD)と呼ばれる病態に陥ります。さらに、CKDが進行することで人工透析と呼ばれる治療が必要になる場合もあります。今後、CKDは2040年までに全世界の死因5位になると推計されています。

 近年、メンデルランダム化解析(以下:MR)と呼ばれる統計学的な手法が注目を浴び、遺伝的な変数を使用して因果関係を探索する研究が盛んに行われています。この方法論の特徴は、医学研究の因果関係を行うときに必須とされてきた介入研究を行わなくても良い点にあります(図1)。

 こうした背景をもとに、今回の研究では、炎症のマーカーである高感度C反応性タンパク(以下:CRP)と腎機能との因果関係をJ-MICC Studyの参加者10,521名を対象にMR解析を使用して検討することにしました。

 欧米人集団で発見された高感度CRPと関連のある遺伝的変異(以下: SNP)セット使用した解析の結果、いかなるMR手法を使用しても、高感度CRPと腎機能との間には有意な関連は認めませんでした。また、アジア人集団で発見された高感度CRPと強い関連のあるSNPセットを使用しても、有意な関連は認めませんでした(図2)。

 統計学的には有意な関連を示さなかった一方で、実際に測定された高感度CRPと腎機能との関連を検証したところ、負の関連を示しました。本論文では、MR解析の方法論の重要性を示唆する一方で、遺伝的要因のみで説明できる分散には限界があるなど問題点についても考える必要があります。この結果のみで、「炎症→腎機能という因果関係はない」と決めつけるのは時期尚早です。今後、異なるSNPセットや新しいMR解析を適用した研究での結果を待つ必要があります。

出典:

  • Fujii R, Hishida A, Nishiyama T, Nakatochi M, Matsuo K, Ito H, Nishida Y, Shimanoe C, Nakamura Y, Turin TC, Suzuki S, Watanabe M, Ibusuki R, Takezaki T, Mikami H, Nakamura Y, Ikezaki H, Murata M, Kuriki K, Kuriyama N, Matsui D, Arisawa K, Katsuura-Kamano S, Tsukamoto M, Tamura T, Kubo Y, Kondo T, Momozawa Y, Kubo M, Takeuchi K, Wakai K. Assessing the relationship between high-sensitivity C-reactive protein and kidney function employing mendelian randomization in a Japanese community based J-MICC Study. J Epidemiol. 2021; in press.
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