座っている時間が長いほど生活習慣病と関わる―日本人の大規模調査を用いて解析―

研究ファイルNo.61:座位時間と心血管代謝疾患の関係

研究の概要

座っている時間(座位時間)が長いことで、血行不良と代謝の低下を引き起こすことにより、死亡率増加や循環器疾患発症と関わることがいくつかの国から報告されています。しかし、他国と比較して、日本国内での座位時間に着目した研究は限られていました。そこで今回は、6万人を超える日本人のデータを用い、日中の座位時間と生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)とその関連因子の関係を、性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)に検討しました。解析の結果、下記が明らかとなりました。

  1. 年代が上がるほど、日中の座位時間の長さと高血圧、脂質異常症、糖尿病の有病率が関係する。
  2. 座位時間が長いほど、肥満度(BMI)、血圧(収縮期、拡張期)、中性脂肪、non-HDLコレステロールなどの値が高くなる

国際標準化身体活動質問票が作られた2011年のデータによると、日本人の座位時間は、世界で一番長いという結果が出ています。一方、日本人を対象とした大規模研究は少なく、本研究は日本人の日中の座位時間と生活習慣病との関係を性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)で解析した初めての研究です。今後、本研究を踏まえた日中の座位時間の減少を行うことにより、生活習慣病の予防と進行抑制に貢献することが期待されます。

研究方法

日本多施設共同コホート研究(J-MICC study)の全国11研究拠点の調査に参加した、虚血性心疾患と脳卒中の既往歴がなく、データに欠損値がない62,754名(男性27,930名、女性34,824名)を解析対象者としました。睡眠時間を除く日中の行動時間は、国際標準化身体活動質問票をベースとした質問票を用い、日中の座位時間の長さと、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)との関係を性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)に検討しました。日中の座位時間は、質問票をもとに以下の4群に分けて解析を行いました。
(1)5時間未満 (2)5-7時間 (3)7-9時間 (4)9時間以上

次に、座位時間の長さと、生活習慣病関連因子である肥満度(BMI)、血圧(収縮期、拡張期)、中性脂肪、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、HbA1cとの関係を検討するため、データがある35,953名(男性17,109名、女性18,864名)のデータを解析しました。

研究結果

1日の座位時間5時間未満の群と比べて、座位時間が長くなると、男性では、高血圧(最大9.6%増)、脂質異常症(最大37.7%増、図2)、糖尿病との関係(最大6.7%増)が認められました。女性では、脂質異常症との関係(最大25.2%増)が認められました。
座位時間の長さと、生活習慣病関連因子(BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、HbA1c)との関係では、年代によって異なるが、男性では全ての項目で、女性ではHbA1c以外の項目で関連が認められました。男女ともに年代が上がるにつれて、座位時間の長さと関連する生活習慣病関連因子の項目数が多くなることが認められました。
60代男女の血圧(収縮期)をグラフ化してみると、座位時間5時間未満から9時間以上にかけて上昇していることがわかります(図1)。これらのことから、座位時間の延伸は、現在の生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無とも関係しますが、生活習慣病の各因子とも関連していることから、今後の生活習慣病発症への影響も示唆されます。



 

出典:

  • Koyama T, Kuriyama N, Ozaki E, Tomida S, Uehara R, Nishida Y, Shimanoe C, Hishida A, Tamura T, Tsukamoto M, Kadomatsu Y, Oze I, Matsuo K, Mikami H, Nakamura Y, Ibusuki R, Takezaki T, Suzuki S, Nishiyama T, Kuriki K, Takashima N, Kadota A, Uemura H, Katsuura-Kamano S, Ikezaki H, Murata M, Takeuchi K, Wakai K; Japan Multi-institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study Group. Sedentary time is associated with cardiometabolic diseases in a large Japanese population: a cross-sectional study. J Atheroscler Thromb. 2020; 27: 1097-1107.
カテゴリー: メタボリックシンドローム, 肥満, 脂質, 身体活動量, 高血圧 パーマリンク