研究ファイルNo.67:ライフコースのなかでBMIに影響を及ぼす時期は遺伝子ごとに異なる可能性
肥満は、さまざまな疾患のリスクファクターとして重要とされています。肥満になるということは悪しき生活習慣のせいなのではないかと捉えられがちですが、近年、遺伝的な因子も肥満に影響を及ぼしているということが明らかになってきました。ゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study: GWAS)という全遺伝子を網羅的に測定する手法によって、肥満の指標であるbody mass index (BMI)と関連のある遺伝子多型がこれまでに多く報告されてきているのです。しかしそれらの研究の多くは欧米人を対象としており、アジア人についての報告は少ないのが現状です。また、体重は人のライフコースに渡って変化し得るものですが、これらの遺伝子多型がどの時期の肥満に、どのようなメカニズムで作用しているかについては未だ明らかではありません。
そこで今回、私たちは J-MICC studyの参加者で、質問票に回答し遺伝子型が判定された11,590人を対象として、過去に日本人の肥満、小児期の肥満、BMI変化と関連が示されている282の遺伝子多型について、調査時のBMI、20歳時のBMI、BMI変化量それぞれとの関連について調査し、遺伝子多型が及ぼす影響がライフコースの時期によって変化があるのかについて検討しました。
結果として、282の多型のうち、調査時のBMIと明らかな関連を示したのはは3つの遺伝子(BORCS7, BDNF, FTO)に関わる7つの遺伝子座でした(図1)。20歳時のBMIでは3遺伝子(TMEM18, FTO, HS6ST3)に関わる6遺伝子座(図2)、BMI変化量では3つの遺伝子(BORCS7, BDNF, FTO)に関わる6つの遺伝子座で関連がみられました(図3)。これらは過去の欧米人による報告でも肥満と強く関連があると知られているものでした。
またこのうち、FTO内に位置する3つの遺伝子座(rs1421085, rs11642015, rs1558902 [遺伝子多型のID番号])は、すべての表現型の項目で一貫して関連が認められた一方で(図1〜3)、TMEM18の近くに位置する遺伝子座(rs939584, rs13021737, rs4854349)では20歳時のBMIのみで関連が認められました(図2)。 続きを読む →