脂質代謝異常症がおこりやすい遺伝子多型

研究ファイルNo.13: 脂質代謝異常症発症リスクにおける脂肪摂取と脂質代謝遺伝子多型の交互作用

現代日本においても、座位中心の不活発なライフスタイルや食生活の欧米化に起因すると考えられる虚血性心疾患、脳血管疾患はまだまだ国民の死亡原因の主因(がんに次いで第2位・第3位)を占めており、これまでの様々な研究によりコレステロール等の脂質代謝や糖質代謝の異常(脂質代謝異常症、糖質代謝異常症)がこれらの疾患のリスクを高めることが分かっています。
また、これまでに、これらの脂質・糖質代謝に関わる遺伝子(APOA5(脂質代謝), GCK, GCKR(糖質代謝))の個人間におけるバリエーション(=遺伝子多型)が、脂質代謝異常症、糖質代謝異常症の発症リスクに関係していることが報告されていますが、これら遺伝子多型と、脂肪摂取、糖質摂取などの食事における栄養摂取との複合的作用(=交互作用)が、脂質代謝異常症、糖質代謝異常症の発症リスクに与える影響は十分には検証されていませんでした。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された2,191名の方の脂質・糖質代謝に関わる遺伝子多型と栄養摂取を含めた生活要因が脂質代謝異常症、糖質代謝異常症の発症リスクに与える影響について検討を行いました。

その解析の結果、脂質代謝の遺伝子であるAPOA5遺伝子の553番目の塩基がG/TまたはT/T型の人が総エネルギー摂取の25%以上の脂肪摂取量であった場合、G/G型の人が25%以上の脂肪摂取量であった場合に比べて、約3倍も脂質異常症のリスクが高くなる事が明らかになりました。
もともと脂質代謝異常症が起こりやすいAPOA5遺伝子の553番がG/TまたはT/T型の人たちは、食事における脂肪分の摂りすぎにより気をつける必要があるのかも知れませんね。

脂質代謝異常症発症リスクにおける脂肪摂取と脂質代謝遺伝子多型の交互作用

出典

  • Hishida A, Morita E, Naito M, Okada R, Wakai K, Matsuo K, Nakamura K, Takashima N, Suzuki S, Takezaki T, Mikami H, Ohnaka K, Watanabe Y, Uemura H, Kubo M, Tanaka H, Hamajima N. Associations of apolipoprotein A5 (APOA5), glucokinase (GCK) and glucokinase regulatory protein (GCKR) polymorphisms and lifestyle factors with the risk of dyslipidemia and dysglycemia in Japanese – a cross-sectional data from the J-MICC Study. Endocr J. 2012;59:589-599.
カテゴリー: メタボリックシンドローム, 遺伝子多型, 食事 パーマリンク