HDL-コレステロール血中濃度と遺伝子多型

研究ファイルNo.23:善玉コレステロールであるHDL-コレステロール血中濃度には複数の遺伝的要因が関わっている

善玉コレステロールであるHDL-コレステロールの血中濃度が低いと動脈硬化が進みやすくなり、冠動脈心臓病や脳血管疾患を発症しやすくなります。HDL-コレステロール値を増やす生活習慣としては運動や食事が重要です。一方、HDL-コレステロール値の個人差については、複数の遺伝子多型が影響しているとの報告はあるものの、生活習慣と合わせた上で、総合的にこれら遺伝子多型がどの様に影響を及ぼしているかは良く解っていません。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された3,050人の方のABCA1, APOA1, SR-B1, CETPの遺伝子の型と生活習慣がHDL-コレステロール値に及ぼす影響について検討を行いました。

その結果、1)喫煙で血中HDL-C濃度が低く、日常生活活動量や飲酒が多いと高くなっていました。2)遺伝子多型ではCETPが、生活習慣と無関係にHDL-C濃度と強く関係していました(図1)。3)ABCA1、APOA1、SR-B1、CETPの4つの遺伝子多型の組み合わせをみてみると、CETPを中心に組み合わせの数が多くなる程、HDL-C濃度への影響が大きくなっていました。

善玉コレステロールであるHDL-コレステロール血中濃度には複数の遺伝的要因が組み合わさって関わり、HDL-コレステロール値が上がりやすい人や上がりにくい人がいることが解りました。HDL-コレステロール値の上がりにくい人は、生活習慣により注意する必要があるでしょう。

遺伝子多型ごとのHDL-コレステロール値

出典:

  • Nakamura A, Niimura H, Kuwabara K, Takezaki T, Morita E, Wakai K, Hamajima N, Nishida Y, Turin TC, Suzuki S, Ohnaka K, Uemura H, Ozaki E, Hosono S, Mikami H, Kubo M, Tanaka H; Gene-Gene Combination Effect and Interactions among ABCA1, APOA1, SR-B1, and CETP Polymorphisms for Serum High-Density Lipoprotein-Cholesterol in the Japanese Population. PLOS ONE. 2013;8(12):e82046.
カテゴリー: J-MICC研究概要, 遺伝子多型 パーマリンク