自覚ストレスおよび対処行動のBMIとの関連

研究ファイルNo.30:男性では、ストレスに対処する過程で肥満になっている可能性がある

 肥満は、高血圧、動脈硬化、糖尿病などのさまざまな生活習慣病と関連していることが知られています。また、心理ストレスも同じように生活習慣病の原因となることが報告されています。この理由として、ストレスを感じることが、生活習慣病のリスクである肥満と関連する可能性が考えられてきました。ストレスと肥満の関連についてのこれまでの研究結果を総合すると、ストレスが高いほど太っているという傾向がみられています。これは、ストレスによって食事や喫煙、運動などの健康行動が変わることや、ストレスによってホルモン量が変化することによって太るのではないかと考えられています(図1)。

図1.心理ストレスと生活習慣病

 一方、心理的なストレスを受けた時には、ストレスにうまく対処しようとする行動(ストレス対処行動)が起こります。この対処行動がうまくいくと、ストレスによる負荷が軽減されることがわかっています。しかし、ストレス対処行動を行うことが、どのように肥満と関連するかについては、ほとんどわかっていませんでした。そこで、今回、J-MICC研究佐賀地区のベースライン調査に参加された方々のストレス対処行動と肥満度(BMI:体重(kg) ÷[身長(m)×身長(m)])との関連について検討しました。 

 その結果、男性において日常経験する問題や出来事に対して「良い方向へ解釈しようとする;肯定的解釈」、「出来事が解決に向かうように懸命に取り組む;積極的問題解決」という対処行動をしている方は、肥満度が高いことがわかりました。逆に、「なりゆきにまかせる」という対処行動をよくする方は、肥満度が低いこともわかりました(図2)。また、これらの関連はストレスを感じている方ほど強くなる傾向が認められました。女性では、これらの関連はみられませんでした。

図2.ストレス対処行動の頻度と肥満度(BMI)との関連

 今回の結果は、男性では、日常生活の問題によるストレスに対する対処行動として、「良い方向に解釈する」、「解決するように懸命に取り組む」などの頻度が高い人や、「なりゆきまかせにする」頻度が低い人は、肥満と関連する健康行動をとったり、ホルモン量の変化が起こっている可能性を示しています。適切なストレス対処行動は、ストレスの負荷を減らすために有用ですが、その際には、肥満にも注意する必要がありそうです。 

出典:

  • Shimanoe C, Hara M, Nishida Y, Nanri H, Otsuka Y, Nakamura K, et al. Perceived Stress and Coping Strategies in Relation to Body Mass Index: Cross-Sectional Study of 12,045 Japanese Men and Women. PLoS ONE 2015;10: e0118105. doi:10.1371/journal.pone.0118105
カテゴリー: ストレス, メタボリックシンドローム, 肥満 パーマリンク